Welcome
2024.11.21 Thursday
Access
Today : 187
Yesterday : 237
Total : 779538
携帯サイト
関係資料
RCプロジェクト
感染症と生物多様性
感染症(新型コロナウイルス)のパンデミックは、地球環境全体を揺るがす大問題となっています。
爆発的な人口増加と経済優先の政策から大規模な森林開発が進んでおり、人と動物、更には微生物と生態系に異変が生じ、地域感染症が瞬く間に世界に拡散しています。
感染症の感染源となる動物が多くの場合、野生動物であり、生態系と密接に関連している特徴があります。
感染症と生態系や生物多様性の在り方をしっかり検討して次の世代に引き継ぐ為にもグローバルな目線で外観しなければなりませんね。
様々な国際条約や国際的な組織が感染症問題や健康問題の指摘をしています。
日本国内でも様々な法制度や施策がこれから展開されると思います。
生物多様性国家戦略でもグローバルな目線で、野生生物だけに起こる感染症も含めて、地球環境のパラダイムシフトへ発展することが必要です。
★マインドマップで感染症と生物多様性について、国際条約から国内の法制度まで概観しました。時計回りに、解説します。
(注)強調文字=リンクが張ってあります。
- 生物多様性条約の締約国会議においては「生物多様性と人の健康」について議論されています。生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)決定ⅩⅢ/6において、「生物多様性及び人間の健康にとっての利益となる健康的なライフスタイルと持続可能な消費及び生産の様式並びに付随する行動の変化に係る機会を特定し、推進すること」等が締約国に求められています。また、COP14決定ⅩⅣ/4では「健康分野における生物多様性の主流化に向けたインセンティブ付与」「生物多様性と健康の関連性についてレビュー等を行うこと」等が締約国に求められています。この他に、第8条の「生息域内保全」の保護地域に関する(a)~(e)が感染症と生物多様性と言う観点から関係してきます。また、(f)の劣化した生態系を修復し及び復元し並びに脅威にさらされている種の回復を促進することや(j)の伝統的な生活様式を有する原住民の社会及び地域社会の知識、工夫及び慣行を尊重し、保存し及び維持すること、そして、利用がもたらす利益の衡平な配分を奨励することなどが関係してきます。(関係記事:アメリカの研究者ら、生物多様性の減少が感染症を増加させ健康被害を助長と報告(発表日:2010.12.01))
- 外来生物と感染症については、国立環境研究所の五箇公一先生の動画「新型コロナウイルス発生の裏にある“自然からの警告”」がわかりやすいです。また、国際環境研究協会で「外来種と野生生物の感染症:両生類のラナウイルス感染症」(宇根有美)の論文が出ています。メディアの記事では「急増する新興感染症、天敵なき地で猛威ふるう侵略的外来生物としての病原体」など出されています。
- 「人と動物の共通感染症研究会」が2000年12月に議論が始まり、翌年、5月19日に活動が開始されています。
- ラムサール条約では、湿地と人類の健康及び福祉(決議X.23)で高原性鳥インフルエンザを取り上げて、人間と健康及び福祉に関する決議がされています。
- 当然のことですがSDGsでは、目標3で「すべての人に健康と福祉を~満たされるべき基本的人権~」として一つのテーマとなっています。また、「新型コロナウイルス感染症」対策に関するSDGs市民社会ネットワークの声明など出されています。
- 気候変動枠組み条約では、健康と気候変動に関する特別報告書が発表されています。環境省では「地球温暖化と感染症」と言う冊子がだされています。地球温暖化と感染症のスライドもわかりやすい。
- ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)でも新型コロナのオフィシャルステートメントが出されています。WWFジャパンでは、「感染症と野生生物、新型コロナウイルスの問題によせて」と題し記事が掲載されています。
- IUCN(国際自然保護連合)でも新型コロナのオフィシャルステートメントが出されています。
- IUCNでは、Great apes, COVID-19 and the SARS CoV-2Joint Statement of the IUCN SSC Wildlife Health Specialist Group and the Primate Specialist Group,Section on Great Apesが出されています。
- マインドマップに加えておりませんが、WWFでは、「COVID-19 AND WWF」という冊子も出されています。また、アジア5つの市場で新型コロナウイルスと野生生物の取引市場に関する意識調査も実施されています。(日本サイト)(英語サイト)
- ボン条約(移動性野生動物種の保全に関する条約)日本は加盟しておりませんが、新型コロナのページが作られています。
- バラスト水管理条約では、有害な病原体の侵入を予防することが書かれています。
- OIE(国際獣疫事務局)の野生生物作業部会から声明が出されています。英語版、日本語版。
- IPPC(国際植物検疫条約)では、『「有害動植物」とは、植物、動物又は病原体のあらゆる種、ストレイン又はバイオタイプであって、植物又は植物生産 物に有害なものをいう。』として病原体もカバーされています。
- 野生生物感染症(仮称)としていますが、野生生物同士で感染するもので人には、感染しない感染症も数多くあります。例えば、過去に話題となった「コイヘルペス」「カエルツボカビ症(五箇さんの動画参照)」「コウモリに感染するホワイトノーズシンドローム」などです。生態系や生物多様性に大きな影響を及ぼしています。
- ワンヘルスアプローチ「人も動物も環境も同じように健康であることが大切」と言うことでここでも感染症に関する問題を扱っています。北海道大学の迫田義博先生のスライドが分かりやすいですね。また、ワンヘルスを扱う学会もあります「日本ワンヘルスサイエンス学会」
- 人獣共通感染症(ズーノーシス)は、動物由来の感染症として厚生労働省からハンドブックが出ています。詳しくはこちらをご覧下さい。人獣共通感染症は、鳥獣保護管理法や外来生物法や動物愛護法とも深く関係している問題となっています。様々な論文が出ていますが、その一つ「日本臨床微生物学会論文」。
- 水産資源保護法は、前記したコイヘルペスなどカバーしてます。
- 家畜伝染予防法では、家畜の伝染性疾病(寄生虫病をふくむ)の発生を予防し、及びまん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的としています。
- 狂犬病予防法では、狂犬病をカバーした法律で、現段階では、まだ日本に侵入していませんが、世界では、既に蔓延しています。
- 感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)では、都道府県へ通知が出されています「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令等の施行について(施行通知)」。新型コロナウイルス問題は、多種多様な情報が飛び交っていますので、深く記述はしません。
【要因とインパクト】
- 森林破壊:熱帯林破壊の影響が大きく様々な国際団体が署名活動を展開しています。
- 単一化した農林水産業/農林水産業への影響:単一栽培が進み、生物多様性が失われる問題があります。生物多様性と農業も一つのテーマとなっています。
- 病原体の拡散:両生類を襲うカエルツボカビ症が話題になりました。詳しくは、五箇さんのビデオを参照ください。また、カエルツボカビ症は朝鮮半島原産と判明と言う報道も出ています。
- 薬用利用:薬用植物は、私たちの健康に必要な一つです。健全な薬用動植物が重要になります。
- ジビエ(ブッシュミート):コロナパンデミックの原因は「動物の軽視」 霊長類学者グドール氏 (関係サイト)/新型コロナウイルス関連 アジア太平洋地域での違法な野生生物取引市場 の閉鎖に関するWWF声明(WWFジャパン)
【改善に向けたアプローチ】
- 自然との共生のあり方:最初に、7都府県対象に、緊急事態宣言が出されました。これは、東京や大都市圏に集中する一極集中の問題がクローズアップされた形になりました。そして、全国に宣言が出され、テレワークなどの在宅勤務が推奨されました。都市部に集中しなくても在宅勤務という新しいライフスタイルの始まりと言えるでしょう。環境省が進める「地域循環共生圏」は、今後、リスク回避に向けて、一極集中から「Uターン」「Jターン」「Iターン」が進むことになるでしょう。自然との共生を「感染症の世界史」を書い石弘之さんは、「地球に住むかぎり、地震や感染症から完全に逃れるすべはない。地震は地球誕生からつづく地殻変動であり、感染症は生命誕生からつづく生物進化の一環である。」と述べています。
- 予防原則(環境リスク回避や科学的根拠):環境と開発に関する国際連合会議(1992)で環境と開発に関するリオ宣言がまとめられました。その第15原則、予防的な取り組み方法は、これから地球規模で徹底してゆく必要があると思います。日本は、予防原則がほぼ機能していない現状があります。予防原則を環境法に取り入れる方策(「予防原則」の法理 ―環境法における論議から―)や「論説 予防原則の意義 - 農林水産省」など論文として出されていますね。
- コロナ禍からみるエシカル消費(日本エシカル推進協議会)いまもっとも必要なエシカル/エシカルな選択をすることの重要性がコロナ後に重要性を増すことについての考察/イギリスEthical Consumerから届いたメッセージ、etc
- アフター・コロナの世界を再生する「グリーンリカバリー」とは?
- CITESでは、2019年夏のCoPの決議で、「2030年までに、野生動植物のすべての国際取引が合法かつ持続可能なものであり、種の長期的な保全と調和しており、それによって生物多様性の損失の停止への貢献と、持続可能な利用と開発の実現」の目標に掲げている。そのために、附属書掲載種の持続可能な利用と、環境優先事項や新たな国際イニシアティブを考慮したCITESの政策ポリシーを確立するとしている。
-
<金井裕さんからのコメント>
生物多様性と感染症との関係を議論する場合、高病原性鳥インフルエンザで何が起こって、どう対処されたのかを検証するのが、もっとも現実的。
・野生生物のウイルスが起源である
・高病原性化が人的要因
・経済被害とその対応
・野外での感染拡大と野生生物との関係(絶滅危惧種や生物多様性ホットスポットでの感染)
・人と野生生物との関係見直し(給餌問題、人と野生動物との距離)
・防疫対策での野生生物との関係
・野外観察などの関係
・飼育動物との関係(域外保全対策での検討事項)
・基礎調査としての野生生物の調査・研究
・世界規模での協力体制
・新型インフルエンザ発生と人界でのパンデミックへの対応(今のコロナウイルス対策もこの関連法案が元)
以上のような広範囲の事象が起こり、関連法令や関係機関の対応がされたので、実際に即しての議論ができるはず。
【最後に】
感染症と生物多様性について、様々な角度から概観してきました。生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の開催に向けて2050年に「自然との共生」という目標を実現するための「感染症と生物多様性」を考えることは今後、ますます重要になってくると思います。そして、国内では日本の自然や世界の自然を保全する為には、感染症の関係法令を一括改正する必要があると考えます。この改正は、普及、啓発、教育まで、幅広い見直しが必要になります。
【追加情報】
- 福岡県:ワンヘルスの実践と人獣共通感染症から県民を守る施策に関する条例の制定を目指しています。条例案.pdf (1.56MB)
- 福岡県:動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い。-“One Health”-
- 新型コロナウイルス感染症等動物由来の人と動物の共通感染症に対する「ワンヘルス」の実践に関する決議
- ネイチャーニュースの翻訳記事「パンデミックの渦中で自然保護のため戦う生物多様性のリーダー~エリザベス・ムレマの向きあう大役は新たな生物多様性ターゲット交渉の陣頭指揮~」
- 健康分野の専門家の声明 新型コロナウイルスとリユース製品の安全性について
- 〃日本語リリース
- FAOの小規模(家族)農業についてCOVID19のページ(英語)
- IGES Briefing NoteIPBES地球規模評価報告書からのメッセージと生物多様性ポスト愛知目標に向けた展望(公益財団法人 地球環境戦略研究機関 自然資源・生態系サービス領域 髙橋康夫)
- 記事:「新型コロナ」自然破壊し増えた人類 病原体の格好の標的
- 新型コロナウィルス感染症に関する各団体声明文
- 海洋の悪いウイルス良いウイルス(全てのウイルスが悪い訳じゃない!)
- 国際ウイルス分類委員会の分類で、全部で3万種程度のウイルスが見出されている